D Style (1999年10月号)
『流行を意識しながら自分流に着くずして大人の余裕を感じさせる 野口伊織』
ファッションに流行があるように飲食店にも流行があるらしい。野口氏が経営する飲食店の一つ、吉祥寺の創作料理『金の猿』は、平日でも1時間待ちという人気の店だ。
「飲食店は今、どうなっているのか、自分の足で他の店をまわってリサーチしています。飲食店だけに限らず、他を見ることは大切だと思う。自分のポジションを客観的に判断できるから。でも流行を追ってるだけじゃ、ダメなんです。さりげなく時代性を取り入れつつも、流行とは関係なくやっているように見える“こだわり”がなくちゃ、お客さんはついてきてくれない。私は一店舗一店主主義。それぞれの店主の趣向が伝わるような店作りを心がけています」
では、流行る店の条件は?と尋ねると、一つはオリジナリティ、そしてもう一つはロケーションのよさ、と野口氏は答える。井の頭公園の入口にあり、竹林を見下ろす『金の猿』は、たしかに心が癒されるような風流な場所にある。安くて美味しいものが当たり前のように氾濫する今の時代に、大人たちが求めるのは心地よい空間なのだろう。
そんな店内でくつろぐ野口氏に着てもらったのは、エトロのニットジャケット&スウェットパンツ。肩肘を張らないソフトなシルエットが、個性的なオーナーにはお似合いだ。さりげなく流行を取り入れつつも、自分流に着くずすスタイルは、大人の余裕を感じさせる。
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