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住まいづくり百科 (1997年7月号)

『駐車場と中庭を挟んで向かい合う独立心旺盛な母と息子夫婦の住まい』


親子関係が円満だからできる、完全別居型の2世帯住宅

敷地のほぼ中央にガレージを挟んでそれぞれの玄関があります。占有面積は独り暮らしのお母様と、仕事上の来客も多い野口さん夫妻のそれぞれの生活スケールに合わせてあります。また、中庭を挟んで1階がリビング、2階が寝室と、それぞれが向かい合っており、お互いの姿が常に見える範囲で日常生活がおくれます。完全分離とはいってもガレージの屋根も兼ねたルーフテラス一体式。便宜上付けた木戸以外は両家を遮るものはありません。「何かあったら飛んでいく」という夫妻の気持ちは、このテラスに良くあらわされています。実際に両家は行き来も頻繁で、「遊びに寄る」感覚で2軒の家を楽しんでいるようです。
ところでお母様はなかなか活動的な方ですが、将来を考えての備えは万全。屋内の出入り口や動線のすべてが車椅子で通行できるサイズになっていること。水まわりの設備など、現在は手すりがありませんが壁内にいつでも付けられるよう補強はしてあります。
「つかず離れず」がとっても暮らし良いですね
いくら仲の良い親子や嫁・姑でも、やはりいつも一緒だと気詰まりになりますよね。これは仕方ないことです。お互いに自分の時間は、気を遣わないで好きに過ごしたいものですし、調度品の好みも違います。だから、元気なうちは別々にしてほしいという希望を息子に伝えたのです。離れているようで、近いこの距離が、気まずくならないのだと思います。多めに作った料理は温度が変わらないうちに届けられますしね。(お母様談)
隣にいる安心感と、少し距離をおいて付き合える自由の両方を手に入れました
今、母の家があるあたりがもともとの我が家の敷地でした。そして偶然隣地が売りに出たことで、新築を計画しました。
2世帯住宅をつくることになって、母から「玄関もお風呂も台所も別にしてほしい」といわれました。私たち夫婦は玄関ぐらい一緒でも良いのではないかな、と思いましたが、考えてみれば、私たちはどちらかといえば夜型の生活。母は朝方。同居型では時間帯が合わないことからトラブルになっていたかもしれませんね。それに、母は自分のことは自分でできるものですから。
母にとっては私たちが近くにいることが、そして私たちにとっては、元気な姿をいつでも見ていられるという安心感があります。普通の2世帯住宅とは、家の配置が違っているかもしれませんが、それぞれの個性に合わせた、しかも、少しだけ距離のあるこの家は、どちらにとっても住みやすいですね。(野口さん談)

今を快適に暮らしつつ、将来的な準備も考えられた高齢化対応計画

母一人に息子夫婦という2世帯住宅。お元気で独立心旺盛なお母様なので、すぐに介護の必要はありません。お互いに干渉しすぎず、それでも生活の気配は感じられ、様子が確認できるように工夫しました。
駐車場を間にして二つの住宅を東西に配置。中庭を挟んでそれぞれの居間を向かい合わせ、デッキと濡れ縁を介して様子がうかがえます。また、両家とも寝室は2階にあります。ルーフテラスで行き来し、消灯も確認できるようにしました。
お母様の希望は明るく、掃除のしやすい家。床はフローリング張りに床暖房を入れ、壁・天井は合板張りでシンプルに、窓にはすべて障子を入れています。将来、足が弱ったら1階にベッドを置いて生活する予定です。車椅子の対策として段差をなくし、出入り口は広く、かつ取り外しがきくような建具を使っています。台所も車椅子が回転できる広さを確保してあります。玄関や廊下に予定した手すりはまだ必要ないとのことで、準備だけしてあります。(二之宮章)

 



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