天気の良い日、からりと晴れて雲一つない青空、その中で真昼の太陽だけがキラキラ照っている。そのまぶしい光のなかを家を出て桜田小学校に向かった。校門を母と一緒にくぐると目の前に雄大に立ちはだかっている校舎があった。いつもみる校舎とはなんとなく違っている様な気がする。そのコンクリートの入って受け付けを済ませ、学力テスト場に向かった。もう前からテスト場に来ている子の母達は子がテスト場で色々な返事をしているのを聞いてやきもきしたりニコニコしたりしている。やがて僕がテスト場に入る番になった。今までドキドキしている胸を押さえていたのが急に爆発して、テスト場入っていく時はめまいがした。 先生が椅子にこしかけていられる。男の先生だ。その前には貧弱な椅子がやはりおいてある。僕はその椅子にこしかけて先生の方に向いた。急に身ぶるいをした。先生が、 「君の名はなんといいますか。」 とだしぬけにいわれたので、めんくらったが 「野口伊織デス」 とぶっきらぼうに答えた。そしたら先生が 「イオリ君ね、ふちのまわりが円くて、食べる時に使う大きな物はなんでしょう」。 と絵を見せながらいわれた。 絵をみるとチャワンに似ているので 「チャワン」 といったら 「チャワンは小さいですねもっと大きな物ですよ」。 といわれたので、やっと思い出し、 「どんぶり」 といった。テストはこれだけまちがえて後は出来た。 帰りに友達にあったので僕が 「君全部出来た」。 と聞いたら、ううんといって首を横にふった。その 友は一題ま違ったそうだ。 「僕も一題違ったよ」「同じだね」 といって顔を見合わせてニッコリわらった。 −(一年入学当時)− (終り)
・部屋の中 明るくなりて 日の光 雲の切れ間に もれいずるかな
・ハーモニカ 吹きたくなりて ポケットに 手を入れ見れど 手ざわりはなし
・教室の 窓から遠く ながめれば かすんで見える 冬の灯台
・夏空に またわきでし たち雲は 学ぶ恩師の 顔に似るかな
桜田小学校卒業文集より